うれし、恐ろし、初めての一人暮らし。
その20●11月5日(水)晴
昨日、引っ越しをした。いや、グレコではなくて私たちの話なのだが。
地震以降、事務所での仮住まいを続けてきたが、ようやく住居を移すことができるようになったのだ。問題は、グレコの処遇である。
新しい家で飼うか、このまま事務所ウサギとして飼い続けるのか。迷った末に、ひとまず私たちだけ引っ越しをして、グレコのいる事務所に通ってくることにした。その後、じっくり考えればいいや。うーん、日本人お得意の『問題先送り』ですね。
夜中に私たちがいなくなってしまうと、寂しがるだろうか。ひょっとして、事務所にいるうちにグレコが突然賢くなって、片づかない仕事を夜中のうちにせっせとしておいてくれたりして。靴屋さんの小人でしたか、あれは。エヘヘ。
家財道具は地震の時にほとんどなくしたので、引っ越しは赤帽さんに頼んで3時間で済んだ。事務所もわずかながら広くなり、グレコは早速、モノがなくなったり置き場所が変わったりした状況をチェックしに歩き回っている。しかし、しかし。ついに別れがやってきてしまった。引っ越しを終えて、事務所へ戻ってきた私たちが、再び家に帰ってしまうという現実に、グレコは耐えられるだろうか。思えばグレコを飼い始めてから、夜、離ればなれになるのは、初めてなのだ。
そんなわけで、一夜あけて今日、事務所に通勤してきた私たち。
「あー、グレちゃん、グレちゃん。寂しかったぁ?」
しかし、寂しかったのは私たちのほうである。家に帰っても、シーンとしてどーも落ちつかず、朝は超・珍しく、早くに目が覚めてしまったのだ。グレコはいつもと変わらず、「?」と、なんの自意識も邪心もないアホ顔で私たちを見上げるだけだ。グレコの一人暮らしは、私たちの心配をよそに、ごくごくスムーズにスタートしたようだ。